MAKING REVOLUTION POSSIBLE
~革命を可能に~

ドミニク氏との対談

ファッションデザインに革命をもたらすデジタルイノベーター

私たちが購入する製品が地球にどのような影響を与えるのかを、世界中が認識するようになるにつれ、サーキュラリティー(循環性)が注目を浴びるようになってきました。サーキュラーエコノミー(循環型経済)は、廃棄や汚染を排除し、製品や素材を使用し続け、自然のシステムを再生するという原則に基づいています。そうすれば、作られ、使用され、廃棄されるのではなく、循環された製品を再び生み出すことができるのです。

これは強力なコンセプトですが、ファッション業界をはじめとするほとんどの業界で、未だ初期の段階にあります。そんな中、率先してファッションデザインにサーキュラリティ(循環性)をもたらしているのが、STITCH(スティッチ)のデジタルクリエーションディレクターのドミニク・スライター氏です。スティッチは、トミー ヒルフィガーのデザイナーたちが服をデザインする新しい方法に転換する手助けをしている、デジタルデザインチームです。

最初のステップは、3D技術を使用してデザインすることです。デザイナーがスケッチする代わりにデジタル的に構築できることで、より生産効率が高い衣服のデザインが可能になり、従来は数週間かかっていた試作品化や改良が数時間でできるようになります。

これにより廃棄物ゼロの製品の制作が、はるかに実行可能なオプションとなります。

3Dデザインだけでは限界がありますが、これがもたらすツールや機能は、デザイナーが新たなレベルで自らのデザインにサステナビリティを取り入れるのに役立ちます。「現時点での3Dツールは、必ずしもサーキュラリティ(循環性)のために構築されているわけではありません。」とドミニク氏は説明します。「私たちは3Dデザインに新しい意味を与え、それをサーキュラーデザインのための強力な手段にしていきます。」

最初のステップは、3Dのデザインネットワークのハブ(拠点)に生地とトリムのデジタルライブラリーを作成し、それぞれにサステナビリティに関する評価を付与することでした。「私はとにかく人々に、選択肢が実際にあるのだということを伝えたいのです。」とドミニク氏は言います。「私たちはデザイナーたちに対して、主導権を握っているのは彼らだということを明確にし、彼らが下した決断が及ぼす影響を、本人たちの目に見える形にしたいと考えています。」今、デザイナーたちは環境への影響が少ない素材を選択するなど より環境に優しい衣服を作成するための方法を即座に選び取ることができるようになっています。

「私たちは3Dデザインに新しい意味を与え、
それをサーキュラーデザインのための強力な手段にしていきます。」

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このデジタルライブラリーは、よりサステナブルで再生可能な製品を作るための第一歩でもあります。例えば、デザイナーがリサイクル生地、またはリサイクル可能な生地やトリムを選択し、分解しやすい方法で製品化することで再利用やリサイクルを促進できれば、彼らにとってサーキュラリティ(循環性)を意識したデザインはより簡単なものになります。

ライブラリーや素材の再生可能性に関するデータの作成と並行して、次に取るべきステップは、生きたフィードバックを取り入れることです。デザイナーは、製作の過程で製品のサステナビリティに関する評価を受けることで、製品をよりサステナブルで再生可能なものにするために必要な情報を入手することができます。

トミージーンズチームのデザイナー、ジョアンナ・ローニッヒは、3Dデザインを学ぶ機会に飛びつき、スティッチのイノベーションに関する最新の情報を取り入れ続けています。彼女は、自分次第で物事が変わるというこの新たな感覚が、すでに肯定的な変化を及ぼしていると説明します。「衣服をデザインしていると、実際にそれが及ぼす影響を忘れがちです。自分が選んだ生地やトリムが、このようなポジティブな違いを生み出せるということを知るのは、私にとって本当に強烈な学習経験でした。」

新しいデザイン方法を導入するのは一筋縄ではいきません。より多くのデータ入力やより複雑なインターフェイスを理解することが必要であり、教育とサポートが不可欠だからです。そこでドミニク氏は、スティッチアカデミーにおいて幅広いクラスやイベントを提供し、日常的にこのツールを使用している人は誰でもスティッチチームのサポートを受けられるようにしました。

こうした変換が求められることこそ、他のブランドがこの分野において中々進歩できない原因だとドミニク氏は言います。「アパレル業界では、誰もが伝統的なやり方に頑固にしがみついています。しかしPVHコープは非常に先進的であり、この改革を前進させるために多大な投資をしています。」

しかし、ジョアンナが指摘するように、変革を起こすにはブランド同士の連携が不可欠です。「これは世界的な問題であり、1つの会社や政府だけでは解決できません。サーキュラリティ(循環性)に関するアイディアに磨きをかけ、強化するためには、各ブランドが数多くの解決策を考え出して、互いに刺激しあう必要があります。」

未来は可能性に満ちています。しかし、それを明らかにするためには正しいマインドセットが必要であることをドミニク氏は強調します。「変化を起こすにはガッツが必要です。たとえあなたが変化を生み出したいと思っても、すぐには理解してくれない人たちが立ちはだかったり、何らかの抵抗があるかもしれません。だからといって、それはあなたが間違っているということではありません。 あなたには好奇心があり、未来を見据えているということを意味します。現状を打破して、従来のやり方を変えるのは大変ですが、不可能ではありません。」

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トミー ヒルフィガー では、サステナブルループの一部となれる、完全に再生可能な製品を製造したいと考えています。1つの製品の寿命の終わりが新しい製品の始まりであるべきであり、私たちファッション業界には更なる努力が求められます。そのため、私たちが目指すCIRCLE ROUNDの第一歩は、服作りとその販売方法を変えることができる、独創的なイノベーションを見つけることを軸にしています。
トミー ヒルフィガーのアクションプランの詳細については、こちらをご覧ください。