ビジネスのシーンにおいて相手に与える印象は、時に大きな決定を左右することも。数多くのビジネスパーソンと接してきたビジネス誌編集者として、また一人の働く女性としての視点で、“魅力的”で“印象深い” 人とはマインドや外見面でどのような共通点があるのか。また、働き方の変遷期である現代に起きているファッションの変化について、Forbes JAPAN Web編集長の林亜季さんにお話を伺いました。
Photo: Tomohiko Tagawa Edit&Text: Yuuki Sakata
TOMMY MAGAZINE #13 _ 2019.08.16 update
— 編集長でありながら現役の記者として現在も日々取材をされているという林さんですが、ここ最近、日本のビジネスシーンで感じる変化などはありますか?
最近面白いなと感じるのは、スタートアップと大企業のカルチャーの融合が色々な面で起きていることですね。『Forbes JAPAN』というとハイエンド層をターゲットにしたビジネスメディアというイメージを持たれている方も多いと思うのですが、スタートアップの起業家や新しい事に挑戦する人を応援していこうというコンセプトを掲げていることもあり、普段の取材は20代の若手起業家から50~60代のベテラン経営者まで幅広くさせて頂いています。ここ数年、スタートアップと大企業がそれぞれのカルチャーの良いところを取り入れてどんどんハイブリッド化していると感じているのですが、特に大企業がスタートアップの空気やカルチャーを取り込む流れが顕著に見られます。日本版の『Forbes JAPAN』が創刊して5年が経ちましたが、この5年でスタートアップがものすごい勢いで成長を遂げた一方、大企業は「変わっていかなきゃ」という危機感を常に持っていて、スタートアップの力を借りて一緒に成長していこうという意識が強くなっているなと感じます。
スタートアップの起業家は合理的な考えを持つ方が強く、例えば満員電車での通勤は疲労度が増して非効率だからフレックスタイム制にしよう、とか、オフィスでの業務中はラフな服装で過ごして商談がある時にだけジャケットを羽織ろう、とこれまで当たり前とされてきた日本企業の制度や風習も合理的な視点でジャッジし、仕事のパフォーマンスを最大化できる環境づくりを重視します。このような考え方やライフスタイルのハイブリッド化が最近は大企業にも広がっていて、例えばスーツスタイル一つとってもかっちりとしすぎず、機能性や快適さを重視してアイテムを選ぶ方が増えていると感じます。
私自身「ワークライフバランス」という言葉があまり好きではなく、ワークもライフだし、ライフの中にワークがあると考えているのですが、働き方やファッションにもその垣根がなくなっていくのはとても自然なことだと感じますし、ブランド側にもハイブリッドな側面が求められる時代なのかなと思います。
— 魅力的だと感じるビジネスパーソンに共通する着こなしのポイントはありますか?
私が素敵だなと感じる着こなしのパターンは2つあって、1つはマイスタイルを貫いている方。例えば「このブランドしか着ない」と確固たるこだわりを持っていたり、自社Tシャツを常に着ていたり。そしてもう1つは、無駄がなく、相手に予断を持たせない方。ちょっとシャツのサイズが大きいな、とかジャケットが短いんじゃないか、とかネクタイの色が少し派手だな、といった違和感を一切持たせない“しっくりくる”着こなしをされている方は、ビジネスの話にも集中できますし、非常に気持ちよくコミュニケーションを取ることができます。服装自体が良い意味で気にならず、風通しの良い会社の経営者にはそういったファッションの方が多いと感じますね。
ある大企業の経営者で、社長として大切にしていることは?という質問に“センシティビティ(=感受性)”だと答えた方がいました。雇用が流動的で2~3年で職場を変えるのが当たり前になった今、優秀な人材に長く働いてもらうためには社員一人一人の感情やポテンシャルを読み取るためのアンテナを張っておかないといけない、そのために感受性が必要だとおっしゃっていたのですがそれがとても印象的で、これからの企業に必要とされることがそこに詰まっているように感じました。会社も感受性をもって、人に寄り添っていかないといけないんだなと。会社も洋服も、あらゆるものが今後そうなっていくのだと思います。
— 今回のTOMMY HILFIGER TAILORED 2019 FALL/WINTERコレクションをご覧になってみていかがでしたか?
ユーザーに寄り添ったものづくりをしているのだなということをすごく感じました。通勤形態の多様化やエコへの配慮で自転車通勤を推奨する企業も増えていますし、自転車にも楽々乗れてしまうストレッチ感と着心地のよさなのにフォーマル感も両立できるセットアップは、まさにハイブリッドなアイテムですよね。
自宅で洗えるウォッシャブルスーツも、合理的な現代のビジネスパーソンやご家族にとって重要なベネフィットだと思います。ファッション性が高く、きちんとして見えるけど着るとラク。人のワークスタイルに服が合わせに行っているという意味で、進化する姿勢が今っぽいなと。働き方や生き方、マインドが変わって行く中で、スーツもここまで進化していたのだなと驚きました。
今日私が着ているのもトミー ヒルフィガーのアイテムなんですけど、パンツはきちんとして見えるのに本当にはき心地がラクで、美しさと着心地を追求して作られているのがよくわかります。
あとは機能性だけじゃなく、見た目も心をくすぐるポイントが多いのもトミー ヒルフィガーのアイテムの魅力ですよね。ボタンの色が一つだけ違っていたり、ジャケットの裏地が可愛いストライプ柄になっていたり、よく見ると遊びが効いていて会話が生まれそうなアイテムが多いと感じました。清潔感やきちんと感はありつつ、素材感やデザインがかっちりしすぎていないのもカジュアルブランドならではの魅力ですよね。トミー ヒルフィガーのコレクションには、円滑なコミュニケーションを生み出すのに大切な要素がたくさん詰まっていると思います。
SUIT #01
自宅で洗濯可能なウォッシャブルタイプのセットアップ。
フォーマルな印象は残しつつ、素材やポイントで遊びを効かせた一着。
セットアップは上下を別で合わせたり、デニムと合わせて着たりすることもできる。
COORDINATE ITEMコーディネートアイテム
SUIT #02
伸縮性の高いストレッチ素材を採用したバイクスーツタイプのセットアップ。
スリムフィット仕様で、スリムに見せつつも伸縮性があり着心地を重視した設計。
自転車などアクティブなシーンにも対応。
COORDINATE ITEMコーディネートアイテム
PROFILE
Hayashi Aki 林 亜季
Forbes JAPAN Web編集部 編集長
2009年、朝日新聞社入社。記者経験後、新ビジネスの開発や投資などを行う「メディアラボ」で複数の新規事業立ち上げに携わる。経済部記者を経て同社を退社。ハフポスト日本版 Partner Studio チーフ・クリエイティブ・ディレクターを経て、2018年7月からForbes JAPAN Web編集部副編集長 兼 ブランドボイススタジオ室長。同年12月から現職。